腰痛にはさまざまな原因がありますが、その一つに「椎間板性腰痛」があります。
「前かがみになると腰が痛む」「朝起きたときに腰がつらい」「長時間座っていると腰が重くなる」といった症状は、椎間板が関係している可能性があります。
今回は、椎間板性腰痛が起こる仕組みや症状の特徴、当院で行っている治療や運動療法についてご紹介します。
椎間板性腰痛とは?
椎間板は、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にある組織です。中心部の「髄核」と、その周囲を取り囲む「線維輪」などから構成され、背骨に加わる衝撃を吸収したり、身体の動きを支えたりする役割があります。

椎間板には日常生活の中で繰り返し負荷が加わりますが、加齢やさまざまな要因によって変性が進み、線維輪に亀裂などが生じることがあります。
椎間板の内部には本来、神経や血管がほとんど存在しません。しかし、変性が進んだ椎間板では、神経や血管が内部へ入り込むことがあり、炎症性物質による刺激や神経の感作などが痛みに関係すると考えられています。
こうした椎間板の変化が腰痛の発生に関与していると考えられる状態を、椎間板性腰痛と呼びます。
ただし、椎間板に変性があっても痛みがない方は多く、画像検査で変性が確認されたからといって、必ずしも腰痛の原因とは限りません。
椎間板性腰痛の特徴
椎間板性腰痛では、次のような症状がみられることがあります。
- 前かがみになると腰が痛む
- 長時間座っていると腰がつらくなる
- 朝起きたときに腰の痛みやこわばりを感じる
- 座った姿勢から立ち上がるときに痛みが出る
特に、身体を前に曲げる動作や、座った姿勢を長く続けることで症状が現れる場合があります。
なぜ朝に腰が痛くなるの?
椎間板には水分を含む性質があり、日中は身体を支えることで水分が徐々に失われ、夜間に横になって休むことで再び水分を吸収します。
そのため、朝は夕方と比較して椎間板の高さや内圧が増加する傾向があります。
こうした椎間板の状態の変化が、起床時の腰痛に関係する可能性があります。ただし、朝の腰痛には筋肉や関節など、ほかの要因が関係することもあります。
また、前屈時の痛みや朝の痛みだけで椎間板性腰痛と判断することはできません。実際には、症状の経過や身体の動きなどを総合的に評価することが重要です。
当院での椎間板性腰痛に対する治療
椎間板性腰痛に対しては、痛みの軽減を図るとともに、腰部に過度な負担がかからない身体の使い方を身につけることが大切です。
当院では、痛みの程度や動作時の症状を確認しながら、必要に応じてハイボルテージなどの物理療法を補助的に取り入れ、運動療法を組み合わせていきます。
物理療法は痛みの軽減を目的として行うものであり、椎間板そのものの変性や損傷を修復するものではありません。
また、腰椎だけでなく、胸椎や股関節の動き、体幹筋の働きにも着目します。
腰椎の安定性を高め、周囲の関節が適切に動くようにすることで、日常生活で腰に加わる過度な負担を減らすことを目指します。
椎間板性腰痛に対する3つの運動療法
ここでは、当院で取り入れている運動療法の一部をご紹介します。
いずれの運動も、痛みの状態や身体の動きを確認しながら行うことが大切です。すべての椎間板性腰痛に同じ運動が適しているわけではありません。
① ハンドニー(バードドッグ)

ハンドニーは、四つん這いの姿勢から対角線上の手と足を伸ばし、身体のバランスを保つ運動です。
背骨を支える多裂筋をはじめ、腹部や臀部などの筋肉を協調して働かせることで、体幹の安定性を高めることを目的としています。
CHECK|運動のポイント
- 1.四つん這いになり、背中を自然な位置に保ちます。
- 2.右手と左足をゆっくり伸ばし、身体が傾かないように姿勢を維持します。
- 3.ゆっくり元の姿勢に戻し、反対側も同様に行います。
片側30秒キープをそれぞれ3セット行います
手足を高く上げる必要はありません。腰を反らしたり、骨盤が左右に傾いたりしないように意識しましょう。
この運動は、椎間板の内圧を直接下げるためのものではなく、体幹の安定性を改善し、腰に過度な負担が集中しにくい身体の使い方を身につけることが目的です。
② 変則マッケンジー(胸椎の動きを意識した伸展運動)

身体を後ろに反らす際、胸椎の動きが乏しいと、腰椎を中心に動かそうとする場合があります。
当院では、腰だけを反らすのではなく、まず胸椎の伸展を意識し、その後に腰椎を含めた伸展運動へ移行する方法を取り入れています。
CHECK|運動のポイント
- 1.うつ伏せになり、両手を胸の横に置きます。
- 2.頭をゆっくり起こし、胸椎を上部から順番に伸ばすように上体を起こします。
- 3.胸椎の伸展を意識した後、両手で床を押しながら、腰椎も含めて無理のない範囲で身体を反らします。
(10秒キープ) - 4.ゆっくりと元の姿勢に戻します。
これを3セット行います。
大切なのは、最初から腰だけを強く反らそうとしないことです。胸椎から腰椎へと滑らかに動かすことを意識しましょう。
なお、伸展運動がすべての椎間板性腰痛に有効というわけではありません。運動によって腰痛が増強したり、下肢への痛みやしびれが広がったりする場合は中止し、症状に合った運動を選択する必要があります。
③ ハムストリングスのストレッチ

ムストリングスは、太ももの後面にある筋肉で、骨盤から膝の下にかけて付着しています。
この筋肉の柔軟性が低下すると、股関節や骨盤の動きに影響し、前かがみなどの動作で腰部の動き方が変化することがあります。
そのため、必要に応じてハムストリングスの柔軟性を改善することも、運動療法の一つとして取り入れています。
CHECK|今回のポイント
- 1.仰向けになり、片方の膝をゆっくり胸に近づけます。
- 2.膝を胸に近づけたまま無理のない範囲で伸ばし、太ももの裏側が軽く伸びる位置で保持します。
- 3.大きく深呼吸を3回行います、ゆっくりと元の姿勢に戻します。
それぞれ3セット行います。
タオルなどを足にかけて行う方法もおすすめです。
腰を大きく丸めて無理に伸ばすのではなく、腰部の姿勢を保ちながら股関節を動かすことを意識しましょう。
大切なのは、腰だけに注目しないこと
椎間板性腰痛では、椎間板への負担を考えることも大切ですが、単純に腰を動かさないようにすればよいというわけではありません。
腰椎を支える筋肉の働きや、胸椎・股関節の可動性など、身体全体の機能を確認することが重要です。
痛みの状態に合わせて適切な運動を取り入れ、少しずつ身体を動かせるようにしていくことが、日常生活への復帰や再発予防につながります。
なお、強い下肢の筋力低下や排尿・排便の異常、会陰部の感覚低下などがある場合は、速やかに医療機関での評価が必要です。
まとめ
椎間板性腰痛は、椎間板の変性や炎症、神経の感作などが痛みに関係すると考えられている腰痛の一つです。
前かがみや長時間の座位、起床時などに痛みが現れることがありますが、症状だけで原因を特定することはできません。
当院では、痛みの状態を確認しながら物理療法や運動療法を組み合わせ、腰椎の安定性や胸椎・股関節の可動性を改善することで、腰への過度な負担を軽減することを目指しています。
腰痛が続いている方や、繰り返す腰痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
