肩の痛み

肩の痛みの原因には、転倒によるものと日常の生活の中での負担或いは老化により、徐々に肩周囲に損傷が起こり障害として発生するものがあります。

そこで、初めに肩の痛みを理解する上で肩関節の構造を理解しましょう。

それでは、一方の肩関節を他方の手で包むように触れてみてください。そこには、大きな三角筋を触れます。それが肩関節(肩甲上腕関節)のアウターマッスルです。そしてその深層部には、インナーマッスルが存在します。

これら二つの働きを大きく分けると、アウターマッスルは肩を動かす時に大きな力を発揮し、インナーマッスルは上腕骨の骨頭をその受け皿である関節窩に常に引きつける働きをします。

 

アウターマッスル

肩関節の中で肩甲上腕関節は、主動筋としての三角筋におおわれいます。そしてその筋肉は、肩関節を動かす際大きな力をはっきします。

しかし、人の関節の中で一番可動域の大きいこの関節は、受け皿である関節窩は、上腕骨の骨頭に比べ大変小さく、ゴルフボールが、ピンの上に乗っている感じで大変不安定です。

そこで、下に述べる四つのインナーマッスルが大変重要な働きを行います。

 

 

アウターの三角筋を取り除いて、その中の筋肉を観てみましょう

インナーマッスル

肩甲下筋

右のイラストは肩関節を前から観たものです

肩甲下筋は肩甲骨前面からはじまり、肩関節骨頭の小結節に付着し、その働きは

上腕骨の内旋運動です

 

インナーマッスル

左のスライドは、肩関節を後方から観たもので、上端には肩甲骨から上腕骨骨頭に付着する

棘上筋。この筋肉は、肩関節を挙上する際三角筋と協調して骨頭を関節窩に押し付ける働きを行います

そして、中段から下段には、肩甲骨から骨頭を取り巻く挙下筋、小円筋が観られ、肩関節を上に挙げたり外旋させます。

左のイラストは、左肩関節の前面をやや下から見たものです。

この筋肉は、上腕二頭筋で肘を曲げると握り拳として現れます

この筋肉の中枢は、二つに分かれていて一つは肩甲骨前面の烏口突起、もう一つは

上腕骨の小結節と大結節の間の溝を通り肩甲骨の上端に付着します。

 

それでは、肩関節をエコーで観察しましょう

超音波での観察は、肩関節のほぼ全域の状態を判断することを可能にします。




肩関節の疾患

肩関節周囲の痛みとして、日常遭遇する疾患

⚪︎上腕骨、肩甲骨、鎖骨の骨折

⚪︎肩関節脱臼(肩甲上腕脱臼)肩鎖関節脱臼などの脱臼

⚪︎腱板断裂

⚪︎上腕二頭筋長頭腱炎

⚪︎石灰沈着炎

⚪︎インピンジメント障害

⚪︎投球肩

⚪︎50肩など多く観られます。


上腕骨骨折と脱臼患者さんの痛みの状態を判断する際、どのようにして痛みが出たのか、どうすると痛みが出るのかなどの問診、そして触診、視診や徒手検査等により理学所見をしっかりとり、その後超音波エコーで確認します。

超音波画像は、組織が固ければ高輝度、柔らかければ低輝度にそして、血液、滑液などの液体は無エコーに描出されます(正確には音響インピーダンスの差により描出されます)

そこで、骨折では、骨の線状高エコーは離断され、裂離骨折では高輝度の小骨片が、本来の位置から離れて描出されます。

     



脱臼時にみられるヒルサックス病変とバンカート病変

脱臼整復後、肩関節にはいろいろな病変が残ります。ヒルサックス病変は、脱臼時骨頭が関節窩に衝突するために骨頭に陥没した骨挫傷が現れます。バンカート病変では、脱臼時関節窩で骨頭を支える関節唇が損傷を起こしたり裂離骨折を同部位で起こします。習慣性脱臼を起こす原因として、このバンカート病変が問題となり、これを防止するため手術や保存療法では外旋位固定が必要となります。



鎖骨骨折 初検時、転位が大きいとエコーでの状態観察を難しくしますが、整復後、骨片同士が近付くため状態の把握がし易くなります。 また、経過観察においても固定状況の把握を可能にします



腱板損傷(棘上筋腱断裂)腱板断裂は、転倒時しばしば発症しますが、高齢者では気がつかないうちに断裂していることがあります。前述したように、肩関節はアウターである三角筋とインナーの四つの筋肉(腱板)の協調運動により動き支えられているので、棘上筋腱が断裂すると、上腕骨の骨頭は上に上がり肩甲骨の肩峰と当たるようになり骨の変形と共に生活に不自由さが出ます



上腕二頭筋腱炎上腕二頭筋腱の長頭腱は肩関節上腕骨の結節間溝を通ります。そのため炎症が起こると肩関節の前方に痛みが出ます。

肘を伸ばしたまま手のひらを上にしそのまま手を上に挙げます。その際、他方の手で挙げる手に抵抗を加えます。その時痛みが強くなったら炎症を疑います。

 




インピンジメント障害この障害は、野球やバレーボールなどボールを投げる打つ際、発症する障害で、上腕骨頭が肩甲骨の肩峰に挟まれ棘上筋腱や棘下筋腱が損傷し時には骨頭に骨挫傷を観ます。そのほか、スラップ障害等関節唇障害などあり、どれも治りにくい障害で、適切な理学療法、運動療法などを必要とします。