腰の痛み

現在日本国内には2800万人もの方が腰痛に悩まされているというデータがあります

そして、その85%は画像所見(レントゲン等)にて異常所見が同定出来ない原因不明の腰痛と言われています

それらの腰痛は機能的腰痛といわれ、身体の機能低下から生じる腰痛であり、改善の為には機能低下を及ぼしている部位、原因を理解することが極めて重要です

「正しい治療は正しい理解(診断)の元に可能」であり、当院では画像所見で異常がみつからない機能的腰痛に対しても原因同定の為の分類を行い、「湿布を貼るだけ」「マッサージをするだけ」ではない腰痛治療を心がけています

また、画像所見で異常がある腰痛に対しても整形外科医と連携を取りながら治療をすすめています

 

腰痛は自分の身体に何が起きているのかをまず知り、理解することが第1歩です

ささいなことでも構いませんので、気軽にご相談ください

機能的腰痛の分類

当院では機能的腰痛を

①椎間板性疼痛

②椎間関節性疼痛

③筋性疼痛

④仙腸関節性疼痛

⑤神経性疼痛

の5つに分類しています

 

腰部にも骨、関節、軟骨、筋肉、神経等の組織があり、損傷の仕方によって痛む箇所が異なりますし、勿論治療方法もそれぞれ変わります

背骨の椎間板が痛いのにマッサージで筋肉を緩めるだけでは治療効果に疑問が残りますし、仙腸関節(骨盤の関節)の不安定性があり、安定感を出したいのにストレッチで筋肉を緩めるだけでは不十分と感じます

 

まずは痛みの部位を同定し、痛みに対して適切なアプローチをしていくことが重要です。上記の5分類はどのような特徴があるのか1つずつ確認していきましょう

 

 

①椎間板性疼痛

椎間板は背骨の骨と骨の間にある軟骨組織の名称です

重いものを持ち上げたり、ジャンプ着地したりと椎間板部に衝撃が加わり生じる腰痛です

軟骨損傷が生じると、該当部を修復するため血管と神経が入り込み、そこに刺激が加わると痛みを感じます

【特徴】

・前屈で脊柱付近の疼痛増強

・朝方痛みが強い

・座位持続姿勢で疼痛増強

・後屈時は痛みが生じないことが多い

 

【アプローチ】

 椎間板圧を逃がすことが出来ると疼痛が軽減し、快方に向かいます。

脊柱の伸展可動性を獲得するためのマッサージや腹背筋群の筋力強化、股関節周囲筋(特に大腿部後面筋群)ストレッチ、腰椎インナーマッスル強化等運動療法を取り入れながら加療いたします

 

 

②椎間関節性疼痛

腰部椎間関節は背骨の後方にある突起と突起が重なり合う部分の関節です

腰椎に負荷のかかる動きや、捻り動作等で関節を捻ると椎間関節部に疼痛が生じます

 

【特徴】

・後屈(腰を反らす動作)で脊柱付近に疼痛増強

・局所的な痛み(指一本で表せる程度)が脊柱付近にある

・立位持続や休息後の急な動きで疼痛増強

・前屈時は痛みが生じないことが多い

 

【アプローチ】

椎間関節部の機械的刺激を抑える為、脊柱周囲の過緊張を及ぼしている筋群のマッサージや、多裂筋・腹横筋等のインナーマッスル強化。胸椎や股関節の伸展可動性や安定性を獲得するための運動療法・ストレッチを取り入れながら加療いたします

③筋性疼痛

筋性疼痛は骨盤骨に付着する筋付着部の疼痛や、筋肉間の筋膜に痛みが出る疼痛、筋自体が硬くなってしまうことから生じる疼痛など、様々な形が存在します

 

【特徴】

・前屈・後屈・回旋等で筋肉が伸長又は収縮したときに疼痛増強

・疼痛部位が広範囲(手のひらで表せる程度)

・同姿勢で疼痛誘発

 

【アプローチ】

疼痛起因となる筋のマッサージや筋膜リリースを行い、痛みを軽減させます。体動時の痛みに応じて、賦活化させる筋とストレッチさせる筋を選択していきます。体幹筋の賦活化や股関節の可動・安定性獲得をするための運動療法を取り入れながら加療いたします

 

④仙腸関節性疼痛

仙腸関節とは骨盤の真ん中に位置する仙骨と、両サイドに位置する蝶の羽のような腸骨の間の関節です。仙腸関節は靱帯と筋肉で強固に連結されていますが、姿勢不良や体動時での関節負荷、産後等のホルモンバランスによる靱帯不安定性により、疼痛が生じます。

仙腸関節性疼痛では仙骨の位置異常や不安定性が3タイプに分類され、タイプごとにアプローチを行います

 

【特徴】

・仙腸関節付近に痛み

・片脚立位の軸足、前後開脚、長時間座位で疼痛誘発

 

①ニューテーションタイプ(仙骨が前傾することで痛みを誘発)

②カウンターニューテーションタイプ(仙骨が後傾することで痛みを誘発)

③不安定タイプ(関節部が不安定になる事で痛みを誘発)

 

【アプローチ】

ニューテーションタイプの方は仙骨の前傾をニュートラルの位置に戻すため、骨盤(腸骨部)を前傾させる必要があります。骨盤前傾の為、大腿部前面の筋ストレッチを行います。

カウンターニューテーションタイプの方は仙骨の後傾をニュートラルの位置に戻すため、骨盤(腸骨部)を後傾させる必要があります。骨盤後傾の為、大腿部後面の筋ストレッチを行います。

 

また、仙腸関節性の疼痛で一番重要なことは関節部を安定させることです

関節部の安定はマッサージや投薬、ストレッチ等で得られるものではなく、骨盤を安定させる筋の賦活化が最重要となります

当院では骨盤を安定させる大殿筋や腹横筋、多裂筋等の筋肉を中心に筋賦活化を行います。また、状況に応じて骨盤ベルトやバンテージでの外固定も検討していきます

⑤神経性疼痛

神経性疼痛は主に痺れや、重だるさ、感覚障害、筋出力低下のような神経症状を伴う病態です

神経症状は、その神経痛がどのような原因で生じているのか判断することがとても重要です!

また、神経性の症状は器質的なもの(脊椎の変形やヘルニア等)も多く、整形外科医と連携しながら治療をすすめています

※今回は運動器由来で脚の末梢神経症状に限定して記載します

 

 

 

【特徴】

・疼痛や異常感覚が下肢に出現

・下肢に筋力低下を感じる

・神経圧迫による症状と神経の滑走障害による症状に分類される

 〇圧迫による症状・・・しびれ感や痛み(+)筋出力障害(+)感覚障害(+)などが生じる

 〇滑走障害による症状・・・しびれ感や痛み(+)伸長動作(ストレッチ)にて症状増悪

 

 

 

【アプローチ】

 神経性障害は神経が圧迫されている(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄等)ことにより生じるのか、神経の動きが悪くて(筋肉との癒着等)生じるのかで分けて考えることがとても重要です。神経圧迫であれば、圧迫を除去するようなアプローチ(腰椎後弯動作獲得、股関節・胸椎の可動性獲得、背・腰筋の緊張除去など)、滑走障害であれば滑走改善を行うアプローチを行います

どのような性格の神経障害なのか自分で判断することはとても難しいので、しびれ等の症状が長続きする場合は一度しっかりと診てもらうことが重要でしょう

 

 

 

様々な腰痛のタイプがありますが、腰痛の中には内臓や腫瘍由来の痛みや、化膿性脊椎炎等の器質的疾患が隠れていることもありますし、①~⑤までのタイプが混合しながら症状を出すことも多くあります

腰部の痛みが長く続く場合は専門家に診て頂くことを強くおすすめします

 

当院は幡谷のクロス病院や下北沢整形外科リウマチ科クリニック等の整形外科と連携を取りながら治療にあたっています

 

ささいな腰の痛みでも、気兼ねなく来院ください(^^)